最近読んだ本:逸身喜一郎著『ギリシャ神話は名画でわかる』NHK出版新書403、2013年

毎日文化センターの、今年10月から始まる講座「ギリシア神話の図像学ー神々のアトリビュートとその表現ー」の素案を練るにあたり、何冊か本を購入した。なかでもこの本は、著者が西洋古典学の専門家だけあって、内容がしっかりしていて、とても面白い。

今回の文化センターのこのテーマは、受講生のご要望に―内心しぶしぶ―お答えしたかたちがったのだが、この本と出合えて、がぜんやる気がでてきた。神話画の典拠となるギリシア神話のさまざまなテキスト、そのなかでオウィディウス『変身物語』の果たす重要な役割、ティツィアーノやリュベンスの絵の分析など、とても充実した内容だ。

私は実のところ、神話画やその図像についてはあまり興味がない。キリスト教図像学ほど、きちんと体系化されていないからだ。なによりも、受講生はアトリビュートを知った瞬間、まるで数式の正解を得たかのように納得してしまい、同時にそれ以上自分の目で作品を見ることを放棄してしまうからだ。美術と数学はちがう。アトリビュートは結論ではない。まして神話の絵画は、テキストを単に絵画ヴァージョンへ翻訳したものではない。美術でしか表現しえない造形的な表現こそが大切だし、美術作品が自分の人生のいろいろな時に語りかけてくれる様々な思念や感覚もある。受講生には、そんな美術作品の本質的な在り方を感覚的にわかってもらえたら、と願っている。

それにしてもギリシア神話の絵画にあらわされる女神たちは、ほとほとあきれるほど、みんなヌードだ。しかもかなりエロティックに描かれている。注文主の男性には美女たちの白い肌は相当に魅力的だったのであろう。しかし―正直なところを言えば―女性である私の目線からは、みんな揃いも揃って胸をはだけているのは不自然だし、ことごとくみんな裸というのもまるで銭湯のようで、やや情緒に欠ける気もする。